013 : 深夜番組



 昔さ、深夜番組をネタにした冗談、流行ったことないか? 知らない?
 真夜中にすごい面白い深夜番組やってる、とにかく見てみろ、『砂の嵐』ってタイトルだからなって薦められて。
 真面目にとったヤツが言われた通りに夜遅くまで起きてたり、ビデオかけて見るわけよ。…あ、もしかしてオチわかった?
 放送終了後の、あれ。砂嵐。なんで気づかなかったんだーって、マジがっくり……そうだよ、ひっかかって馬鹿にされたのなんのって。
 まあ、それはまずいいんだ。今は別の話。


 高校ん時の同級のNを覚えてるか? ついこの間、真夜中に急に連絡があったんだ。…ちょっと様子がおかしくてさ。
 頼むから泊めてくれって電話。外で飲んでて帰れなくなったとか急用があるって雰囲気じゃないのさ、ただ妙に切羽詰った調子で、お願いだから今からそっち行かせてくれって。
 断るほどの用事も無かったからさ。でも顔あわせて、マジでびっくり。すっげやつれてたからさ。
 病気かって聞いても、いや別にとかなんかはっきり言わないし。うちまで来れるんだから大丈夫かと、無理には聞かなかったんだけど。
 調子が乗らないんだか口が重かったから、とりあえず酒出して音楽かけて適当に雑誌とか眺めながら飲んでたんだ。
 電話があったのが十二時過ぎる頃で、特別何もしないうちに午前の二時を回るって時だった。
 Nがさ、ぼそっとね。
 実は。
 自分とこのテレビがおかしいんだ、って。
 午前二時になると勝手につくんだと。タイマーつきでもないのに、毎晩必ず。番組見てる途中なら切り替わる。気味悪いからって起きてるの止めてその時間には寝てるようにしても、数秒前にふっと目が覚めて、テレビのつく瞬間を目にするはめになる。毎日毎日。
 映ってるのは…


 ああ、今日も二時ちょうど。
 砂嵐だ。


 あいつが来た日、こうなった。信じられないって表情になって目をむいて、画面睨んでた。
 そんでどうしたかって? まあ、五分後に消えたんで、怯えてるあいつを朝まで宥めてたよ。
 それから特に音沙汰なかったんだけどね、一週間前にこれが始まった。
 あいつが亡くなった、翌日から。
 そうだよ、死んだんだ、あいつ。脱水症状起こして。
 なんかの偶然?
 おまえ、知らなかったんだな。このテレビ、大分前に壊れて電源入れてねえんだ。だからあいつ、うちに来たのさ。意味無かったけど。
 そうだよ、そもそもつくわけないんだよ。


 悪いな。
 巻き込んで、悪いとは思うけどさ。
 でも、一人で抱えてんの、嫌なんだよ。


(2003.5.4)






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