雪起こし



 ひらっと青ざめた光が障子を染め、はりはりと空気を切り破る音がした。
 夜更けて強く吹き始めた風ががたりと大きく、鍵をかけぬままにしていた窓を鳴らした。どうやら今夜はこのまま嵐になるらしい。
 読みかけの本を伏せて、ついっと障子戸を開ける。
 と同時にずだんっと強い音が地面をゆらし、部屋は闇に落ちた。


 落雷は、この一帯の電源をまとめて断ち切ったらしい。見える範囲全て、街灯の光ひとつも無い。
 滅多に無い漆黒の闇を、踊るように雷光が疾駆する。
 方向から見て海の上だろう。一塊の雲がことさらに光を孕み、はりはりと空を切りつけた。
 ストロボをたいたように一瞬、くっきりと浮かび上がる光景は幻想めいていて、どこかぞっとするほどに美しい。
 一人夜に目覚めて在る心細さを補って余りあるほどに。


 唐突に明かりが戻った。
 しらしらと眩しい蛍光灯が見せる室内が無性に作り物めいて感じられ、即座に明かりを落とす。
 寒いはずだ。
 夜を映している窓をさらりと撫でるようにして、まっ白な雪片が舞っていた。
 無限に誘うように。






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