架空庭園




ふつりふつりとひたる日溜りに響く
たどたどしいピアノの雨だれ
隔離された熱帯に微睡んだ
悲しみは儚く喘ぐやさしい猫


咲くことのかなわなかった花のありかを求めれば
いつも一人迷う、真昼
数多の緑に碧を重ね
かきむしられた皮膚に描かれる迷図の森を抜けて
足もとをからかうしなやかな尾は気まぐれに
さえずることを知らぬ極彩色の鳥を狙っている


空は届かぬ場所にさみしく晴れている
風花はひそやかに溶けるだろう
いつからともなくくり返される雨だれの乱れ
滴るぬるみの中で微睡んだ
悲しみは儚く喘ぐやさしい猫








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