廃 墟
かつて在りし街は水底に眠り 永遠の微睡みを魚たちがすり抜けてゆく 青闇が小路に佇み 鐘は夜明けを告げることを忘れた
墓石は緑を飾り 花持ちて訪れる者はもはやない 静寂は迎える死者も 悲しむ生者をも思い出すことがない
月影にたゆたう在りし日の街に 染み出した影の淡さよ 還らじの人々の夢よ
歳月の形を残したまま ゆるやかに朽ちてゆく水底の街 目覚め得ぬ微睡みに沈む魚よ 夜明けを失った街に 青闇は佇んでいる