火 蛾
ひら、と 深更の灯火に誘われ 美しき焔の熱を知る
ひら、と 暁暗の残火に誘われ ゆらぐ熱をそれは知る
はたと甦る鮮やかな 忘れやったはずの記憶は哀しく 捨て去ることさえかなわぬままに 錆び朽ちようとして ただ古りぬ 胸底に
ひら、と 夢虫は誘われ 蜜に寄り来るに似て 灯火に寄り添いはためくさまは 儚く 眠りについた想いを呼び醒ます その身を焼いて