惑 声




日の下で
止まぬ雨の音か
通奏低音か
もはや意識にのぼせぬほどに
途切れなく
うるさく
鳴きわめいて


日の下に
新たに生まれなおした
形を違え
羽を得て
途切れなく
忙しく恋いて
歌い鳴く


蝉は夜を数えるか
残る日と夜を数えるか
陽は落ちて
木闇に飲まれ
静まりかえる
短夜に
この薄明るい闇の中
やがて昇る陽を
残る命を数えるか


数えるか



蝉が
ぽつり
鳴く







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