《鳥追いの夢》




やせた獣の影が散る
数多の鳥の柔毛に交じる
踏みにじられて粉々に
跡形もなく砕け散る


彼の宵に雄々しく吠えた獣
追われることの無い獣
何処に幾度さまよったのか
色褪せた毛につやは無く
月の色さえ映せずに
そしてもはや影も無く


青ざめた獣の夢よ
やがて夜にさまよい出せば
甘い名残りの風にまぎれ
幻の草木を踏みしめて
いつまでも鳥の声を追う
翼の音よ
儚く殻の割れる響き
軽やかに産声を上げて獣を誘う


秘め事めいた獣の柔毛
たてがみは雄々しくたなびき
月光に似た風に従う
鳥の行方を求めながら
吠え猛る、疾駆の喜び
――今は過去


月に散る獣の影
生まれ出づる鳥のかげり
青ざめた獣の夢よ
儚く割れた殻を捨て
獣を誘う鳥の産声






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