11. 旋律 眠りの中に思い出され 微笑みを誘う 声を持たない歌よ 最初の記憶に溶け込み 忘れられるでもなくある やわらかな歌よ 奏でようとしても とぎれとぎれ 零れ落ちて 歌い切れぬそれはただ 子守歌だとだけわかっている どこまでもゆるやかに 慕わしいしらべだ |
12. 夜明け このまま 曖昧なままが、いい 朝なんて 鮮やかに色帯びつつ 地平線を支配する淡い 兆しだけで十分 全てをさらけ出す太陽なんか いらない |
13. 言の葉 触れるにたやすい肌の白 熱帯びた朝に 約束して 永遠は求めないと 嗚呼 抱きしめる腕を 応えた言葉を 信じたい けれど |
14. 波 よせて 返す 今までも これからも それだけ それだけのこと よせる 還る どこまでもくり返し それだけ それだけで よかった のに 本当 に? ふいの高波は 足場の脆さを 嘲笑い 攫われる 浚われる 底の底まで そしてまた よせる かえす くり返す |
15. しずく 落ちよ はねよ 深く光を包んで 巧まざる造形を 刹那 輝かせて |
16. 色彩 どんなにキレイだって 単色ばかりじゃつまらない 混沌バンザイ! 混ぜるほどに 濁っていくんじゃないかな シンプルイズベスト? 思い切って あと一色 ね 冒険心が大事 並べて 重ねて 混ぜこぜ 気まぐれな 出来映えは花さ 空さ 発色豊かにいこうよ 君と僕の関係 けどね、でも その服には 一言言わせて? |
17. 春 じわり にこり いささかぬるむ ふわり きらり まだまだ冷たい それ見ろ枝先 蕾がゆるみ 緑を刷いて待ちぼうけ 心弾ませ待ちぼうけ |
18. 夏 陶然と 瞑目する 煮詰められた あまりにも色濃い影の中で |
19. 秋 誘惑ではなく その必要はなく けれど冷えゆく風のひと刷けごとに 世界は彩られてゆく 六華の白を 待ちわびながら |
20. 冬 熱量は見えない 皮膚一枚分下に 力強く脈打っていても 静かに見えるものが 弱いとは限らない 凍える雪の下が 冷たいだけとは限らない 高く高く飛ぶためには 一度 低く小さく身体をかがめるものだ |
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