41.花/ 42.悠久/ 43.螺旋/ 44.遺伝子/ 45.輪廻/ 46.宇宙/ 47.星/ 48.舟/ 49.飛翔/ 50.おしまい


41. 花

手を指を
濡らす金色
滴り香る

木の下に
黄金と散り
すがりつく指その手
色濃い香に溺れ
飛沫と弾く

光去り
色も綾目も知れぬ闇夜に
囁きたてる花だ
何処にあると悟られずとも
密に満ちて
色も香も甘き
こがね



42. 悠久

人に造られながらも
人に与えられたものとは
異なる時間を生きるモノ

はるかにひさしく在る
それらの
穏やかな力強さを
空の下に想う
なおはるかな時に属する空の下に



43. 螺旋

巻いて捩れて
ぐるりぐるり

始まりの位置、終わる場所
近いにしても一致はしない
同じようで遠く
点でなくぐるり
円でなくくるり

変容の兆
成長の約束
円くは収まらず
草木に宇宙に人の内に
まろやかに巻いてゆく
ぐるりぐるり



44. 遺伝子

色褪せた昔の写真
画面で笑う昨日の笑顔

ああ、まったく
うんざりするほどさ

小さく小さく小さいものに
見事に支配されてる
歴然たる事実の再確認

逆らいたいけどさ
とりあえず
見なかったことに



45. 輪廻

もうすぐだよ
一個の卵は魚からはじまり
いずれ水かきを失う

これは短いかな
それとも長いのかな
トツキトオカで進化の海を
泳ぎ渡る

もうすぐだよ
温く
狭く
やわらかな海から旅立つ
いつもそう
海を懐かしみながら
大地を求めずにいられないんだ

多種の命を巡るかのよう
生まれかわりの束の間の果て
ようやく僕らは呼吸する
過ぎた時代のすべてを抱きしめて



46. 宇宙

誰か
どこかに
いませんか

六十億を越えてなお私たちは
迷子のようにさみしがり
果てを知らない虚空に
隣人を求め
際限なく手を伸ばし続けている



47. 星

野原は緑一面に
たんぽぽが
きらきらとゆれる



48. 舟

水底に力なく
舟の一艘 横たわる
永く朽ちぬまま

果たすべき役目を失い
岸に繋がれてゆらゆらり
もう旅はしない
荷を運ばない
艫綱もそのまま
ゆるりと沈んだは
何時のこと

それは死か
それは眠りか
水底で
朽ちることさえ忘れられて



49. 飛翔

身の内すべての力をこめて
飛びあがれ
飛びあがれ
天地の境が失せるまで
見えるすべてが青になるまで



50. おしまい

始めるために
まずは終わろう

さあ、足をそろえ
さあ、頭をさげて
観覧感謝とごあいさつ

なじんだ場所の終焉が
さすがに少し怖いかも
けれど
最後の一歩で最初の一歩
舞台がまっさらに戻る
大喝采のフィナーレ
怖気づくのはもったいない

新しく始めるために
さあ
まずは終わろう



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