011:英雄/ 012:砂漠の水/ 013:南にある町(街)/ 014:聖杯/ 015:主従
016:長い夜/ 017:スティグマ/ 018:混血/ 019:後継者/ 020:花束

011:英雄

剣持つものが英雄ですか
異形を殺し尽くせばその名を得られるのですか
屍の山を踏みしめて
その耳は
その目は
血に塞がれて見えるのです

012:砂漠の水

ひとしずくたりとて
無駄にすることは許されぬ
生命潤す甘露よ

ああ、それでも
あなたの涙ほどには
苦くも甘くもない

013:南にある街

眩しい陽射し
朗らかな歌声
人々が陽気に笑う
そこは憧れの場所

たとえ
とっくに滅びたと知っていても
憧れは残り咲き続ける
街と同じ名を持つ
花びらの鮮やかさとともに

014:聖杯

何によって満たされるかが
価値をもたらすのだ
器は器でしかなく
形に意味はない
知りえぬ者たちは目の色を変えて
真偽に惑ってうろたえ騒ぐ

ただ無心に祈る者のみが
いずれ気づくのだ
己が身そのものこそが
神の意思の注がれた
無二の器であることを

015:主従

我が唯一の主、と誓うことができた喜びが
同族ならばわかるだろう
もはや得られぬと諦めていた相手を
見出だすことができたこの途方もない幸い

滅び待つばかりの血脈を
我が主は選び取り
空飛ぶことに意味を与えてくれた
小さき身の人よ
あなた無くしてはこの翼にさえ価値が無い
その背に従い
その身を負って
あなたの短き生の全てに私は従う
受けとりたまえ、永遠の忠誠を
私の生命は主の望みのまま

016:長い夜

夢覚めぬように
夜を追って歩くよ
見知らぬ数多の空の下
声無きモノと眼差し交わして

陽の光など要らぬ
影持たぬモノたちと
明けぬ夜の住人でいよう

始まりは知らない
終わりははるか彼方

017:スティグマ

それは聖なる印と呼ばれ
君を手の届かぬ場所へ連れ去った

誰が決めた、それが神に繋がるものと
それは誰のための神だ
苦しめることだけが為せる業の全てであるなら
俺は神を殺すものとなろう


はずかしげにそっと微笑んでいた君の
手にあったそれはただ
ささやかな痣でしかなかったのに

018:混血

想いばかりが先走り
混じらぬはずのものが混じり合った
生み成された私は
どちらぬも属さず
どちらのものでもあり
居るべき場所の見出せぬままに
天地のはざまに彷徨っていた

あなたの言葉を信じて
絆であるこの身を誇ることを知った
私は
欠けた『半分』なのではなく
豊かに満ちた『二倍』なのだと

019:後継者

いくらでもどうぞ
栄誉示す名が必要ならば
欲しくはありませんね
飾り物は邪魔なだけ
重要なのは伝えられた心
身についた力でしょう?
形式は要りません
教わった覚悟だけ
いただいてゆきますよ

020:花束

その花一輪が
彼のせいいっぱい
想いのこめられたそれを
少女は受け取らなかった
一本だけでみすぼらしい、と

受けとる者のない花を
彼は泉に捧げた
花は水面に細波をたて
細波の全てに花の色が踊った

残酷な少女は生涯知ることができないのだ
泉をうずめた
彼の花束の美しさを

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