People in the Marvelous Wind  2(仮)




Presented by HUNTERS
(水葵常夏&月斗桂)











 》 hunt 1:


 世界には不思議な遺跡が出没し、それがすっかり日常に溶け込んでしまったなか、遺跡からの発掘品は遺物と呼ばれ便利なものとして認識されている。トレジャーハンターによって持ち出されたそれらの研究から新たな技術が開発されたりするのだ。
 貴重なものや危険なものは何処からか嗅ぎつけてくるのか国が買い上げ、下手をしたら徴収していく。しかし大量にあり安全なものはそれこそ子供の小遣いでも買えてしまう。
 そして今、全国のテレビには世界的にも珍しい個人での研究、開発の成果が映っていた。
 その翌日。高校への登校風景の中に彼らは溶け込んでいた。
「シルヴ。昨日のニュースを見たか?」
 友人に呼ばれて彼……制服に飲まれかけている、薄く柔らかい茶色の髪に大きめな濃い茶色の目を持つ少年があくびをしながら答えた。
「え? 見てない。昨日はずっとメンテしてたから。それどころじゃ無かったよ〜……。」
「やはり。そうではないかと思っていた。寝てる脳をたたき起こして読むんだな。」
 そう言われて友人から受け取った新聞に目を落とし……だんだん表情が厳しくなっていく。とはいえあまり怖くは無いのだが。
「なにこれぇぇぇぇぇぇーっ!!」
 叫ぶなり新聞をびりびりに破り捨てる。近くのゴミ箱に。そしてポケットから常備しているモバイルを取り出すとすぐさま電源を入れて検索を開始。ものの数秒で望んだ答えが返ってきた。
「じゃあエンスイ! おれこれから……。」
「待てぃ。」
 くるりと学校と反対の方向へ体を向けたシルヴの首根っこをがしっとエンスイが掴んだ。
 そしてそのまま学校の方向へ引きずられていく。もちろんシルヴは抵抗するが、相手にならない。彼はシルヴより身長が高いし、何より細身にみえても力があった。
「は〜な〜せぇ〜!!」
「テストが帰ってきてからだ。」
 別にテスト返しぐらいどうでも良いのに。そう呟いたら凄い勢いで睨まれてしまった。
「勝ち逃げは許さん。」
「勝手に勝負にしてるだけじゃないか〜!!」
 シルヴの叫びが、意味も無く響いた。




 授業中にこっそりと集めた情報を基にして、シルヴは今日のうちに出現した遺跡の前に立っていた。
 今の姿は制服ではなく、ラフで動きやすそうな私服に、背中と腰に鞄が二つ。ついでに帽子も被ってきた。
 手に入った情報ではこの遺跡……難易度は十段階の下のほう、普通の人でも頑張ればクリアできる、ランクEのこの遺跡である実用試験が行われようとしている。そのため遺跡探索では珍しく、レポーターや新聞記者などの報道関係者と一般の見物人が群がっていた。
(やっぱりか。まぁ目立ちたがり屋さんで捜しやすかったよ。)
 秘密でも関係ないが、やはり楽なほうが良い。
 それより何とかして近づかねばならない。そして、見極めねば。本当に、本物なのか。
 目当ての人物は……すぐに見つかった。何しろ人の山自体が目印になるのだから。研究者然とした雰囲気に遺跡に入るには足りなさそうな体力が見て取れる体格。顔はまあ普通だ。
 頭の中で色々と接触の方法を考えた結果、一番無難な方法をとることにしたシルヴは、いやいやながらも人の塊りの中へ突撃していった。ある意味秩序だった、無秩序の中でもみくちゃにされる。
(何でこんなことしてんだろ……。)
 そんな気になるが、自分に返す答えは決まっている。
(目標視認。ターゲット、ロックオン。ファイアー。……な〜んてね。)
 人ごみの最前列にたどり着くと張ってあったロープを潜り抜け彼の前に飛び出す。こういうときは小柄でよかったと思う。
「あのっ!」
 その場の全員の視線が自分に集まるのを感じる。周りを警備員に囲まれていた本人は不意を突かれたとばかりに目を見開いていた。
「あなたの発明品が大好きですっ!!」
(あれ?)
 なんだか予定してたセリフと違うような気がする。けどかまわない。
 警備員がはっとしてシルヴを押し戻そうとしたが、興味を持ったらしい彼に遮られる。
 言葉と同時に手に持っていたあまり豪華ではない、清楚な印象の花束を突き出して、表情を作って顔に浮かべた。
「だから、もっと知りたくて、えっと……。」
 一生懸命な言葉に一生懸命な表情。
「一緒に遺跡の中、行かせてくださいっ!」
 頭を下げて再び彼の目を見つめる。情感たっぷりに物語る目は捉えて離さず。
 そして止め。
「お願いします……。駄目……ですか?」
 瞳を潤ませつつ小首を傾げ訴えるシルヴに反対できるものは今のところいなかった。
(う〜ん……何でみんな引っかかるのかな〜? 楽で良いけどさ。)




《 hunt 2》




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